教育文化学研究室は2005年度に発足しました。その前身となった教育計画論講座が発足したのが1980年度ですから、当研究室はもうすぐ誕生から半世紀を迎えることになります。この間、研究室の名前は幾度か変わり、学生も教員も入れ替わりましたが、研究室がずっと大切にしてきた理念があります。それは人権尊重の精神です。 教育計画論講座の初代教授で、日本のエリート研究に大きな足跡を残した麻生誠先生(1932~2017)は次のように述べておられます。
ほんとうのエリートは人権思想をもっているはずである。『日本の学歴エリート』のなかで、私は「人権」には言及していない。しかし、エリートとは、卓越した能力をもって社会に奉仕する「機能集団」をいうのであって、決して「階級」なのではない。エリートの高貴性は、選ばれた者の「権利」ではなく、社会から受諾した「義務」によって定義される。(麻生誠「真のエリートとは何か」講談社『本』2010年1月号)
麻生先生のご退職から30年以上がたちますが、人権尊重の精神は、形を変えて今に受け継がれています。今の研究室には在日外国人や障害者をはじめとするマイノリティ集団、不登校、ひとり親家庭、生活困窮層、社会的養護のもとにある子どもなど社会的に不利な立場にある子どもに関する研究をしているスタッフ・学生が数多く在籍しています。しかし、人権に関わる研究をすることだけが「人権の尊重」ではありません。
大阪大学憲章は、第9条で「人権の尊重」を、第10条で「対話の促進」をうたっています。大学は確かな人権意識をもった人材を社会や学術界に送り出し、人権を尊重する世の中をつくる責任を負っています。普段の組織運営でも、ハラスメントや差別を排してすべての学生・教職員が伸び伸びと学んだり働いたりできるようにすることが求められています。つまり、教育や研究が行われる環境が人権を尊重しているのかが問われているのです。
こうした考え方に基づいて、私たちは人権を尊重する研究室づくりにむけた研修や学習の機会を充実するとともに、普段の研究室運営でも風通しのよい対話ができるように努めています。また、人間科学研究科や大学本部の取り組みに積極的に参加して、人権尊重の精神を大学全体に広げるように努めています。
2025年12月
人間科学研究科
教育文化学研究室
髙田一宏・知念渉